聖徳太子が用明天皇2(587)年に創建したと伝わる紫雲山頂法寺(しうんざんちょうほうじ)「六角堂(ろっかくどう)」は、いけばな発祥の地。
六角堂の住職は代々、華道家元の池坊(いけのぼう)氏が務めています。
毎年、4月中旬には「春のいけばな展」、11月中旬には「旧七夕会池坊全国華道展」が開催され、たくさんの美しいいけばなを鑑賞することができます。
管理人は先日、江戸時代から続く「旧七夕会(きゅうたなばたえ)」を見学し、六角堂に参拝してまいりました。旧七夕会は、日本最大にして最古の花会です。(取材は2020年11月15日(日))
紫雲山頂法寺はなぜ『六角堂』とよばれているのか?
正式名称「紫雲山頂法寺」は、本殿の建築様式が六角宝形造(ほうぎょうづくり)であることから、「六角堂」と呼ばれています。
現在の本殿は1877(明治10)年に再建されたもので、正面に拝殿があります。
六角堂の御詠歌(ごえいか)は「わが思う 心のうちは 六の角(むつのかど) ただ円(まろ)かれと 祈るなりけり」というもので、「六根清浄(ろっこんしょうじょう)」を願うものです。
10階建てのwest18ビルのシースルーエレベータ(展望エレベータ)に乗れば、六角堂を真上から見ることができます。west18は、1階がスターバックス・コーヒーのビルです。
west18というビル名は、六角堂が西国三十三所の第十八番札所であることにちなんでいます。
ちなみに西国三十三か所の札所にはすべて「御詠歌」があります。また、この霊場をまわれば、この世で犯したすべての悪行が消滅し、極楽浄土に生まれ変わることができるとされています。
京都の街中にある六角堂。west18は向かって左側のビルです。この写真は、池坊会館に展示されている模型です。
六角堂の御朱印はバリエーション豊か
コロナ禍で、御朱印帳に直接書いていただけるお寺や神社が少なくなっていますが、ここ六角堂さんは書いていただけました。納経料(のうきょうりょう)は300円。
こちらでは六角堂の御朱印だけではなく、御詠歌や聖徳太子の御朱印もいただけます。納経所にはドライヤーが完備され、お守りやお土産のお菓子などもあります。時間は8時から17時まで。
六角堂は、西国三十三所第18番の札所であり、洛陽三十三所観音霊場第1番の札所でもあります。
六角堂の白鳥は凶暴?
六角堂は都会の中のオアシス。鳩や白鳥にも出会えます。この池は、聖徳太子が沐浴された池(ただし、現在は人工)だと伝わっています。
イギリスのマサチューセッツでは、コブハクチョウの巣に近づいた幼児が親鳥に殺されたという死亡例があり、アメリカのニューヨークでは、同じくコブハクチョウの巣に近づいた成人男性が殺されています。幼児の場合は水中に押さえつけられたことによる溺死、成人男性の場合は襲われたことによる心臓麻痺です。((引用元:白鳥は凶暴で殺された人もいる!?その生態や危険性について)
六角堂の鳩みくじと一願成就
六角堂は鳩のパラダイスでもあります。素焼きの鳩の置物の中におみくじが入っています。500円。鳩のカラーは基本的にはブルーですが、季節限定で他のカラーも登場。
鳩をお家に持ち帰る場合は、頭より高い場所に置きましょう。
https://aumo.jp/articles/30930
こちらは「一願成就」。一つだけ願い事を書いて鳩の中に入れお寺に奉納します。こちらも500円。
見ているだけで心癒される『一言願い地蔵』
願いごとは欲張らずひとつだけ。これが結構難しかったりしますよね。お地蔵さまが首を傾げていらっしゃるのは、その願いごとを願いを叶えてあげようかどうしようかと考えているお姿だそうです。
嵯峨天皇にも効果あり!!良縁のパワースポット!縁結びの六角柳
平安時代、身も心も美しい妃を探していた嵯峨天皇の夢に如意輪観音が現れ、「六角堂の柳の下に女性がいるので、すぐに使いのものを差し向けなさい」とのお告げがありました。その通りにしたところ、本当に絶世の美女がいて、その女性を宮中に迎えたそうです。
そのため、六角柳には縁結びの御利益があるとされ、2本の枝を合わせておみくじを結び、願をかけると良縁に恵まれると伝わっています。
特に美人で有名だったのは、橘 嘉智子(たちばな の かちこ)/檀林皇后(だんりんこうごう)ですね。
彼女は、鳥や獣の飢えを救うため、そして「諸行無常」の真理をみずからの身をもって示すために、「自分が死んでも遺体は埋葬せずに路傍に放置してください」との遺言を残したそうです。
御本尊の如意輪観音は秘仏、そのご利益とは?
嵯峨天皇の夢にも登場した如意輪観音ですが、意のままに願いをかなえる宝である「宝珠(如意宝珠/チンターマニ))」と、煩悩を破壊する「輪宝(法輪/チャクラ)」を持ち、縁結びだけではなく、あらゆる願いを叶えてくれるとされています。
長寿や健康、子宝、安産から技芸上達にいたるまでさまざまなご利益があるそうです。
六角堂の創建者である聖徳太子を祀る『太子堂(開山堂)』
白鳥の池に隣接するのは、六角堂を創建したとされる聖徳太子を祀る「太子堂」。少年時代の聖徳太子の像が祀られています。
聖徳太子は、四天王寺建立の用材を求めるために小野妹子とともにこの地を訪れ、池で沐浴していました。その時、前世からの念持仏である如意輪観音像を木の枝の間に置いておいたところ、観音像が突然動かなくなり光明を発しました。
そして観音像は「この地で衆生を済度したい」と太子に告げたそうです。これが六角堂のはじまりだとされています。
如意輪観音、親鸞上人の夢にも現る!
1201(建仁元)年、29歳の範宴(はんねん/浄土宗の宗祖、のちの親鸞上人)は、比叡山より毎夜、ここ六角堂に100日間参籠(さんろう)されました。
「親鸞堂」には、六角堂参籠の姿を自刻されたと伝えられている「草鞋の御影」と、夢のお告げを聞いておられる姿「夢想之像」が安置されています。
親鸞上人の像の説明文には「親鸞上人は毎夜、比叡山より当寺本堂に百日参籠された。その九十五日目の暁の夢で、当寺御本尊より『法然の許へ行け』との示現を得た。このお告げによってまた再び百日参籠され、当寺より法然上人の許へと通った。
それから二年後、また夢中に『行者宿報設女犯 我成玉女身被犯 一生之間能荘厳 臨終引導生極楽(現代語訳:仏教修行者であるあなたが結婚するならば、私が玉のように美しい女性となり、あなたに一生お仕えし、その後浄土へと導きましょう)』との偈文(げもん)を授かり、これによって日本に新しい救いの教えである浄土真宗を開かれたのである。
このお姿は、比叡山より当寺本堂に参籠され、また再び比叡山へお帰りになろうとされているお姿です」とあります。
にこやかな十六羅漢と合掌地蔵さん(+邪鬼3人)
お釈迦様の弟子のなかでもとくに優れた16人の弟子を十六羅漢というそうです。このお坊さんたちは、お釈迦様の教えである「和顔愛語(わがんあいご/穏やかな表情と優しい話し方)」を守っているので、みんなニコニコされています。
十六羅漢の後には「六角堂御幸桜(みゆきざくら)」があります。御幸桜の名は、996(長徳2)年、花山法皇の六角堂の御幸(天皇の外出)により西国三十三か所の観音巡礼が始まったことを受け、花山院前内大臣(かざんいんさきのないだいじん)が、「世をいのる 春の始めの 法(のり)なれば 君か御幸の あとはありけり」と詠んだことにちなんでいるそうです。
この枝垂桜は、3月中旬から咲き始める早咲きの桜で、京都に一番早く春を告げる桜でもあります。例年、4月の前半に夜間のライトアップがあります。
袈裟を着て托鉢の鉢などを持ったお坊さんが16名、合掌地蔵さんが1名なので、残りの3名は邪鬼ということになります。
「邪鬼」とは仏教の教えを守ろうとしないひねくれものだそうですが、こちらの邪鬼はすでに改心しているようで、とてもキュートだったりしますね。
六角堂の鎮守は唐崎社
六角堂の境内には、稲荷神社と唐崎社があります。お寺の中に神社とは、日本の神様、仏様はおおらかですね。
こちらには、祇園社(八坂神社)と天満宮(北野天満宮)の神様も合祀されています。
京の都の中心部にある「へそ石」
本堂の右手の敷石の中には、中央に丸く穴の開いた六角形の石があります。京の都の中心部にあるという理由から「へそ石」と名付けられたと伝わっています。別名「要石(かなめいし)」。
この石は、もともと寺の門前の六角通りにあったものを、明治時代の初期に境内に移されたそうです。
このへそ石にも不思議な言い伝えがあります。平安京造営時の793(延歴12)年、本堂の位置に道を通すことになり、当時の桓武天皇が遷座を祈ったところ、本堂自ら一晩で15mほど北に移動したそうです。そのとき、ひとつだけ元の位置に残されていた敷石がこのへそ石だったということです。
六角堂はいけばな発祥の地
代々頂法寺の住職は、本尊の如意輪観音に花を供えることになっていたのですが、室町時代に、池坊 専慶(いけのぼう せんけい)という立花(たてばな/生け花のうち、室町時代から続くもっとも古い様式)の名手が登場します。
専慶のいけばなは、当時、京都の人々の間で評判であったと、東福寺の禅僧の日記『碧山日録』にも記録されています。
そして16世紀前半、池坊 専応(いけのぼう せんおう)がいけばな理論の体系化をはかりました。『池坊専応口伝』という口伝書は、現在でも門弟に継承されています。
「旧七夕会池坊全国華道展」は江戸時代から続く
写真は江戸時代の京都の名所案内記をもとにした記念品(花洛細見図(からくさいけんず)のうち「六角堂立花(りっか)」)の織物です。池坊会館に展示されていました。
江戸時代から六角堂の七夕立花会には、全国から池坊の門弟が集まり、多くの立花が飾られていました。
明治維新の暦改定を受けて、現在は、毎年11月に「旧七夕会池坊全国華道展」が開催され、日本中のいけばなを愛する人たちで賑わいます。
クラシカルないけばな、ポップないけばな、清楚なもの、華やかなもの、どのいけばなも甲乙つけがたく、いけばなが室町時代から時を超えて、人々に愛され続けてきたのも納得できます。
紫雲山頂法寺『六角堂』へのアクセス
京都市営地下鉄「烏丸御池」駅5番出口から徒歩3分または、阪急京都線「烏丸」駅21番出口から徒歩5分。
名 称 | 紫雲山頂法寺・六角堂 |
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住 所 | 京都市中京区六角通東洞院西入堂之前町248 |
電話番号 | 075-221-2686 |
拝観時間 | 6:00〜17:00(夜の特別拝観時期を除く) |
納経時間 | 8:00〜17:00 |
拝観料 | 無料 |
公式サイト | http://www.ikenobo.jp/rokkakudo/ |
今回は、京都の真ん中(おへそ)にある紫雲山頂法寺・六角堂をご紹介しました。
街中にあるということで、境内はやや小さめですが、可愛い、綺麗、楽しいがいっぱい詰まった魅力いっぱいの素敵なお寺でした。
錦市場や四条河原町、八坂神社にも徒歩圏内。短い旅行でも十分楽しめるアクセス抜群のロケーションです。
そうそう、今夜の夢に如意輪観音様が現れるかもしれません。