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上田 美由紀~女性凶悪犯から「危険な異性」を見分けるコツを考察(2)

今回は、鳥取連続不審死事件の犯人に上田 美由紀(うえた みゆき/1973.12~)の半生を追うことで、危険な異性を見分けるコツを考察してみたいと思います。

上田 美由紀の鳥取連続不審死事件、木嶋 佳苗の首都圏連続不審死事件、筧 千佐子の関西青酸連続死事件、これら3つの事件の概要は、以下の記事でざっくり説明しています。ご興味がある方は、あわせてごらんください。

上田 美由紀の半生

前回ご紹介したの木嶋 佳苗の事件が発覚した直後に、鳥取でも1人のスナックホステスの周辺で大量の男性が変死していたという事件が発覚しました。

木嶋の事件は2007年から2009年、上田の事件は2004年から2009年にかけて発生しています。

同世代の太めの女性による大量殺人事件ということで、並列に語られることが多い二つの事件ですが、被害者の傾向や犯行の手口がまったく違います。

木嶋の被害者はほとんどが婚活中の男性で、女性に騙されやすい心理状態になっていたということは否めませんが、上田の被害者は既婚者が多く、ほぼ全員、彼女が働いていたスナックの客でした。

上田による男性の大量殺人事件が発覚したきっかけは、2006年11月に、知人の母親から126万円を騙し取った詐欺容疑で逮捕されたことでした。

Ruby
Ruby
この詐欺事件が発覚しなければ、まだまだ犠牲者が増えていたかもしれません。

それでは具体的に二人はどう違うのか、上田の生い立ちから見ていきましょう。

派手好きで情緒不安定なシングルマザーに育てられた上田 美由紀

上田 美由紀(1973年12月~)は、土木作業員の父親と専業主婦の母親の間に生まれ、5歳上の兄が一人いました。父は無口な人だったようですが、美由紀が幼少の頃に亡くなり、兄妹は派手好きで情緒不安定な母の暴力を受けながら育ちました。

一見、良家の優等生に見えた木嶋 佳苗とは違い、美由紀は近所の家から物を盗んだり、学校では弱い者いじめをするなど、手の付けられない「不良少女」でした。

県立高校の看護科に進学するも、ほどなく中退。大阪でストッキング製造工場や結婚情報センターの事務の仕事をしていましたが、どの仕事も長続きせず、10代で自衛官と結婚し2人の子どもをもうけます。この結婚は金銭トラブルで、1996年にピリオドを打つことになります。

離婚後は鳥取に戻り、駅前のスナックで働いていましたが、そこで2人目の夫と出会い、2人の子どもをもうけます。

その後、親せきから譲り受けたとされるスナックの経営を始めるのですが、店の客と不倫をし、2004年に2度目の離婚をします。同時期に店も経営不振に陥り閉店を余儀なくされました。

百犬くん
百犬くん
この時点で子どもは4人。美由紀の計画性のなさに驚いてしまうな。

口がうまく男性に取り入るのが上手な上田 美由紀ですが、同じ人と長く交際を続けることはできず、結局4人の子を持つシングルマザーとなってしまいました。

美由紀が勤めていたのは大衆的なスナックでしたから、スナックの給与だけでは4人の子どもを養っていくことは難しく、昼間は病院の清掃の仕事をしていたこともありました。

ミルクちゃん
ミルクちゃん
工場の従業員や事務員の仕事でも長続きしなかった美由紀が、昼と夜のダブルワークなどできるとは思えないよね。

木嶋 佳苗は華やかな生活を見せつけ婚活男性に近づいていきましたが、上田美由紀は子どもを使った同情作戦が得意でした。

逮捕時子どもは5人でした。5人目の子どもは2004年に誕生したようですが、父親が誰なのかは不明です。

ごみ屋敷のなかで子ども5人に犬3匹と猫5匹と暮らす

上田 美由紀は家賃2万6千円のアパートに子ども5人と犬3匹、猫5匹で暮らしていました。

部屋の間取りは8畳と4畳半のキッチン。とうていこの人数で住めるよう広さの物件ではありません。

このアパートの大家は、美由紀が逮捕直前まで勤めていたスナックのママでした。この女性も美由紀が逮捕される5カ月前に、彼女に42万円の入った財布を盗まれています。

娘のように可愛がっていた美由紀から窃盗の被害を受けたことで、相当ショックを受けたようですが、「裁判が(美由紀にとって)うまくいき、また出てこられるならば、『よかったね』と言ってあげたい。やっぱり可愛いからね」と語っています。

ひろしさん
ひろしさん
彼女の魅力がイマイチわからないのですが、実際に接すると愛嬌のある人なんでしょうね。
村田さん
村田さん
遠くから見ている分にはさっぱりわからないけどね。

スナックは、美由紀の事件があったため移転し、アパートも「事故物件」となってしまったため、取り壊されています。

5人の子どもたちは、コンビニで購入したおにぎりを1日に20個与えられるなど、ほとんどネグレクト状態でした。

ただし上田美由紀は、木嶋 佳苗のように贅沢な車や貴金属には興味がありませんでした。

安アパートに住み、生活のために無免許で車を運転し、銀行口座すら開設していなかったようです。

木嶋 佳苗のようにゴージャスな生活を見せびらかし、結婚をエサに独身男性を騙すのではなく、生活苦をアピールし、周囲の人たちの同情を引いて、生活費を騙し取るタイプの詐欺師だったのです。

上田 美由紀の手口① 嘘の妊娠話で金銭を詐取

美由紀はたびたび、スナックの客と深い仲になり、妊娠したとして、堕胎の費用を請求していました。

もちろん妊娠などしていないのですが、たいていの場合は双子や三つ子を妊娠したことにし、費用も2倍、3倍かかると嘘を吐き、相場の2倍、3倍のお金を騙し取っていました。

事件が発覚したときも、46歳の自動車会社のセールスマンAと一緒に暮らしていましたが、2人が同居に至った理由も、Aが「三つ子を妊娠した」と告げられ、3000万円もの養育費を請求されたことでした。Aもまた美由紀のスナックの客でした。

Aに美由紀の妊娠を電話で告げたのは、美由紀の妹を名乗る「アケミ」でした。「親戚から妊娠を責められ、姉は自殺する」と脅してきたのですが、美由紀には妹などおらず、彼女が声色を変えて一人二役をしていました。

もちろん3000万円など、普通のサラリーマンには到底払える額ではなく、美由紀は彼女の住むアパートにAを呼び寄せ、一家の面倒を見させることにしました。

Aは妻子と別れ、美由紀に1000万円以上貢いだとされていますが、美由紀は「お腹にいる3人の子どもは薬で堕胎した」と言ったそうです。

Aは詐欺事件の共犯ということで、懲役3年の実刑判決を受けています。

妻子のある真面目な車のセールスマンが、一人のホステスと出会ったために前科がつき、人生を台無しにしてしまいました。もちろんAのしたことは許されないことですが、彼は加害者であると同時に被害者であるともいえるでしょう。

上田 美由紀の手口② 達筆な手紙大作戦 & 子どもをダシに同情を誘う

美由紀の被害者たちは独身の婚活男性ではなく、美由紀のスナックの客でした。彼女は不倫にも罪悪感がなく、交際相手の中には既婚者も大勢いました。

被害者の多くは、新聞記者、刑事、トラックの運転手、警備員など、定職がある立派な社会人たちです。

なぜ、分別のある大人の男性たちが、次々に被害にあったのかといえば、5人の子どもを健気に育てるシングルマザーとその子どもたちに同情したからだと考えられます。

窃盗被害に合ったスナックのママも、彼女に同情し、自分の店に雇い入れました。男性に限らず、女性の同情を引く話術にも長けていたのでしょう。

ごみ屋敷に住み、5人の子どもにコンビニで購入した20個のおにぎりを食べさせている女性とは思えないような、美しい文字と思いやりにあふれた文面です。

Jasmineさん
Jasmineさん
LINEやメールばかり使ってるわ、あたし。反省。
矢野係長
矢野係長
まずきみは、ペン習字から始めよう!

美由紀に騙された男性たちはもともと真面目な社会人でしたが、彼女と付き合うようになってから、無断欠勤をしたり、同僚から借金までして彼女に貢ぐようになっていったそうです。

美由紀は5人の子どもたちにも、ターゲットの男性あてに手紙を書かせていました。

子煩悩で仕事熱心だった男たちは、職場を無断欠席するなど「美由紀と交際をはじめ、様子を一変させてしまう」。妻子を捨て美由紀被告の元に行き、彼女の言うがままに多額の金を貢いでいく。そして男たちは一様に「美由紀に癒された」と話すのだ。

「キライではなかったよ。可愛いところもあったしな」
子供をダシに使うんや。アイツの子どもにオレのことを“お父さん、お父さん”って呼ばせよる。そりゃ、こっちも悪い気はせんやろ。“お父さん、一緒に暮らそう”とか、“お父さんとお母さんは結婚しないの?”なんて言われればな、こっちはホロっとくるがな。それにアイツ、子どももたーくさん育ててるしなぁ
「ああ見えて無邪気なところがあって、子どもみたいにジャレついてきたり、可愛いらしい手紙なんかもマメに書いてきたしな
「若い女にそんなことされりゃ、男なら誰だってうれしくなるやろが」

かつて美由紀被告と付き合ったことで、妻子を捨てた70歳近い男性の証言だ。(『誘蛾灯 鳥取連続不審死事件』(青木理/講談社)より

上田美由紀は、太めなスタイルながら身長150cmと小柄。そんな女性がスナックで働きながら、健気に5人の子どもたちを女手一つで育てている…。

被害者の男性たちは、とにかく気のいい人ばかりで、最初はスナックに通い彼女の生活を助けてあげようとしていたのでしょう。

美由紀はそんな男性たちの同情心につけこみ、お金を巻き上げていたのです。

不幸な最期をとげた真面目な男性たち

①「美由紀に出会えてよかった。本当の愛を知った」と書かれた段ボール箱の中で命を終えた新聞記者

判明しているなかでの最初の犠牲者は、1999年に鳥取支局に赴任してきた新聞記者のBさん(享年41歳)。

Bさんが美由紀と出会ったのは、やはり彼女の働くスナックでした。

妻子のあるBさんは単身赴任中でしたが、彼女にのめり込み一緒に暮らすようになります。美由紀に給料のほとんどを貢いでいたのか、同僚からも借金をするようになりました。

そんなBさんは、2004年5月13日、轢死体(れきしたい/列車にはねられた死体)で発見されました。

彼が入っていた段ボール箱には、「美由紀に出会えてよかった。本当の愛を知った」との走り書きがあり、この事件はBさんが自らの意思で命を絶ったと処理されています。

②美由紀にDVを受けていた泳げない警備員の溺死

警備会社の社員Cさん(27歳)は、2001年ごろにスナックの客として美由紀と出会いました。

Cさんは非常に気が弱く、美由紀は自分のアパートに彼を住まわせ、ベビーシッター代わりに利用していたそうです。Aのケースと同様、Cさんのお給料も巻き上げていました。

美由紀はCさんをフライパンで殴るなど日常的に暴力をふるい、実体のない借用書を書かせたりしていました。

耐えかねたCさんは実家に逃げ帰ったこともありましたが、乗り込んできた美由紀に強引に連れ戻されてしまいました。

そして、2007年8月18日、Cさんは美由紀の家族と一緒に海に出かけましたが、沖合約200mの海底に沈んでいるのが発見されました。

泳げないCさんがなぜそんな沖まで行ったのかは不明ですが、警察は事故死として処理しています。

③山中で発見された妻子ある刑事

鳥取県警の刑事Dさんは、2007年に捜査の一環で美由紀の勤めるスナックを訪れます。この男性も妻子がありながら美由紀をとても気に入り、スナックの常連となりました。

ほどなく交際が始まったのですが、新聞記者のケースと同様、次第に勤務態度が悪くなり、同時に金銭問題も浮上しました。署内でも問題となっていたそうです。

Dさんは2008年2月に、山中で首を吊った状態で発見されるも、「事件性はない」とされ司法解剖もされませんでした。

④沖合600mで発見されたトラック運転手

トラック運転手のEさん(享年47歳)は、2008年2月頃から美由紀と交際し、少なくとも300万円を彼女に貢いでいました。

そんなEさんも2009年4月11日に、沖合約600m水深約3mの海底で発見されることになります。

溺死であるはずのEさんの肺からは砂と、体内からは睡眠導入剤が検出され、美由紀は強盗殺人容疑で逮捕されましたが、彼女は現在も一貫して否認を続けています。

⑤電化製品の集金に行き、帰らぬ人となった電器店経営者

電器店経営者のFさん(享年57歳)は、美由紀の勤務するスナックの客ではありましたが、交際相手ではありませんでした。

一人で5人もの子どもを育てるシングルマザーの美由紀を信頼し、2009年に彼女と交際相手のAに、140万円を超える家電製品を「掛け売りで」納品しました。

当然2人は、最初からお金を払う意思などなく、すでに電化製品は売りさばいており、代金は未回収となっていました。

Fさんは2009年10月7日に鳥取市内を流れる摩尼川(まにがわ)の浅瀬で、うつ伏せの状態で水死しているのが発見されましたが、大人の男性が溺れるような川ではありません。

Fさんからも睡眠導入剤が検出されたことで、美由紀は強盗殺人容疑で逮捕されましたが、彼女は現在まで一貫して否認を続けています。

Fさんは家族に、「美由紀宅に集金に行く」と言い残して出かけていますので、支払いの意思をしめし招き寄せ、お茶かお菓子に睡眠剤を混ぜて眠らせたのだと考えられます。

EさんとFさんの体内から検出された睡眠導入剤は別のものでした。美由紀はある人に睡眠導入剤をもらっており、EさんとFさんの事件の間に、薬の種類が変わっていたそうです。それが強力な証拠となり、2つの事件の逮捕につながったとされています。

⑥病死扱いされた元ホテルマン

元ホテル従業員のGさん(享年58歳)は、2009年に脳梗塞を患い、仕事ができなくなったため生活保護を受けて暮らしていました。

Gさんが美由紀と男女関係にあったかどうかはわかりませんが、近所に住んでいたため、子どもの面倒を見るなど親しく交友していました。

ところがある日、Gさんが美由紀の車を借りて出かけた先で、追突事故を起こしてしまい、相手の車の修理代金や治療費などを美由紀が立て替えることになりました。

でもこれは親切心ではなく、Gさんが月々もらう生活保護を取り上げるためであり、9月の末には少ない生活保護費のなかから6万円を渡しています。

10月26日に少しだけ開いたドアの隙間から、美由紀と同居人のAが笑いながら、Gさんに錠剤らしきものを服用させている姿が目撃されています。

その日はGさんの意識が突然混濁した日であり、翌27日の朝には病院に救急搬送されるも帰らぬ人となりました。

Gさんの体内からも睡眠導入剤が検出されましたが、持病を抱えていたこともあり、最終的に、睡眠同粒剤と死亡との因果関係が証明できず、病死と判断されました。

Ruby
Ruby
美由紀は2003年と2008年に、無免許運転で検挙され、罰金を支払っているのに、まだ車を運転していたのでしょうね。

上田 美由紀の手口

美由紀とは’05年の秋に、向こうの勤めていたスナックで出会ったんやけど、最初の頃から積極的やったね。俺が肩がこると言ったら、塗り薬を持ってきたから『うちの車に乗って』と言われ、いきなりラブホテルに連れて行かれたんや。それで『ここで塗るから脱いで』と。女にホテルに連れ込まれたのは初めてやったね。

それから付き合いが始まったんやけど、1ヵ月もしないうちにカネの無心が始まった。美由紀がずるいのは、子供をダシにすること。向こうの長男が一緒におるときに、あいつは長男に俺のことを『お父さん』と呼ばせるのよ。それで、子供の口から『お父さん、一緒に暮らそう』と言ってくるわけ。

そら、その気になってしまうやろ。一緒になるんやったら、いろいろしてやらなあかんと思って、カネを都合するようになったんよ。(小野一光「凶悪事件」の現場から)

上田 美由紀の周囲で不審な死に方をした男性たちは、ほぼ全員美由紀と「金銭トラブル」を抱えていました。

彼らは、木嶋 佳苗の被害者たちのように婚活中の男性ではなく、最初は1人で5人もの子どもを育てている美由紀の生活を少しでも楽にしてやろうと、スナックの常連になったと考えられます。

そのうち、美由紀は子どもダシに使うようになります。ますます不憫に思った男性がどんどん経済的な援助をするうちに家庭を忘れ、美由紀にのめり込んでいったのではないでしょうか。

けれども時が経つにつれ、自分は妻子まで捨てて美由紀に貢いでいるのに、美由紀は同時並行的に複数の男性からも援助を受けていたことがわかり、不満を募らせるようになったのでしょう。

そこで「金銭トラブル」が発生し、自殺か他殺かはわかりませんが、命を失う不幸な結末を迎えることになったと思われます。

木嶋佳苗のケースとは違い、被害男性が幸せのうちに亡くなったとは考えられません。

ですが美由紀は佳苗とは違い、自分の為だけではなく、自分たち家族のための「生活費」を詐取していたのではないかと思えるのです。

美由紀ほどのコミュニケーション能力と愛嬌があれば、男性を殺めなくても、それなりに幸せな人生が歩めていたのではないかと思うと残念でなりません。

美由紀の子どもたちは、事件当初は施設に保護されましたが、現在はそれぞれ別の家庭へ里子に出されているそうです。

(少なくとも)6名の男性のご冥福を心よりお祈り申し上げます。